Steel Panthers World War 2 JAPANESE HQ
2015年の1発目です。
前回の中級第13弾の冒頭に「2014年の1発目」と書いてありますので、 なんと1年振りということになります。
正月休みの恒例となりかけていますw
実は今回のシナリオをネタにしようかどうしようか、この2ヶ月ほど迷っていました。
なぜならマイナー国家同士の戦いだからです。
ルーマニアとハンガリーって・・・
もうほとんどの人は、 この両国家が戦闘をしたこともご存知ないでしょう。
だから余計に紹介したくなりました。
<シナリオ背景> 月日:1944年9月17日 場所:ルーマニア、アラド バトルタイプ:Romania (Defend) vs Hungary (Advance) ターン数:35 登場部隊 ルーマニア:Paulis支隊 ソ連: 第32機械化歩兵連隊 ハンガリー:第1機甲師団、第6予備歩兵師団 |
チュートリアルにはプレーヤーはルーマニアでのプレイ推奨と書かれています。
ハンガリーでもプレイしてみましたが、 あまりよくありませんでした。
このブリーフィングを見て、ちょっと待てよ? と思った方もおられることでしょう。
ハンガリーもルーマニアも同じ枢軸国なのに、なんで戦ったの?ということにお 気づきになったことかもしれません。
そうなんです。
たしかにルーマニア王国は枢軸国だったんですが、 1944年8月、ルーマニアはソ連軍の侵攻により情勢が悪化し、そのままクーデターが起こりました。
これをルーマニア革命と言います。
ファシズムから共産主義に変わったわけです。
8月24日に連合軍に降伏
8月25日にドイツ軍に宣戦布告(早!)
その後、 ルーマニア王国は消滅してしまいます。
ただ、ルーマニアとハンガリーって昔から仲が悪いんです。
第1次世界大戦終結後の1918年に「ハ ンガリー・ルーマニア戦争」が勃発しているぐらいです。
ほとんど日本では知られていない歴史かもしれませんが、ハンガリー軍10万、ルーマニア軍25万の兵力で戦争が行われました。
この戦争で、ハンガリーはルーマニアに首都ブダペストを占領されてしまいます。
その後、ルーマニア軍はブダペストを撤収しますが、そこで多くの物資を略奪されました。
こういう因果関係があったからでしょうか、 ハンガリーはルーマニアが連合軍に寝返ったことで、ルーマニアに侵攻します。
シナリオの舞台となっている「アラド」は、 現在ルーマニア領のルーマニアで最も繁栄している都市ですが、11世紀から歴史に登場する名の知れた地名です。
そうそう、 元々、ルーマニアはハンガリー領だったんです。
(いろいろありますが省略しますw)
要するに、 ハンガリー人とルーマニア人は大変仲が悪い!ということです。
さてさて、今回のシナリオの戦闘は 「パウリシュの戦い」(Battle of Paulis)(1944/9/14-19)と呼ばれるもので、 ハンガリーとルーマニアの国境沿いにあるアラド県にある「Paulis」(パウリシュ)という町(村)で起こりました。
その経過ですが、
9月13日、ハンガリー軍はルーマニアのアラドを占領しました。
そしてさらに東に向かって進撃します。
14日、パウリシュで激しい抵抗に遭遇します。
この戦いはPaulisでのルーマニア軍の6日間の防衛戦です。
これも日本では知られていませんが、ルーマニアで は戦記として語り継がれています。
<ハンガリー軍の戦力>ハンガリー軍の戦力を見てみましょう。
ハンガリー軍は
歩兵部隊が3個中隊
戦車部隊が2個小隊
149mm榴弾砲が1個中隊、 105mm榴弾砲が2個中隊
増援部隊が4号H型小隊
大まかな戦力はこういった感じです。
ハンガリー軍の戦車部隊は 「ハンガリー第1機甲師団」であり、 当時、ハンガリーの主力戦車だったトゥラーン戦車を120輌ほど保有していました。
トゥラーン戦車は40mm砲搭載 の「40M Turan」と75mm砲搭載の「41M Turan」がありますが、今回は「41M Turran」戦車です。
しかも見たこともないほど大量に!
初めてこのシナリオをプレイしたとき、ハンガリー軍の戦車がうじゃうじゃ出てくるので、 これは史実じゃないよなと勘違いしたくらいです。
そして随伴歩兵の3個中隊はハンガリー第6歩兵師団で、 これは実際は予備(Reserve)部隊でしたが、ゲームでは普通の歩兵部隊です。
そしてルーマニア軍を悩ます大口径の砲が充実していますw
増援部隊はルーマニアもハンガリーもありますが、ハンガリー軍はなんとドイツの4号戦車です!
でもこれはハンガリー軍仕様の車輌です。
<ルーマニア軍の初期戦力>ルーマニア軍は士官学校の士官候補生からなる部隊でした。
この部隊は後に「パウリシュ支隊」と呼ばれました。
戦力は、士官候補生の3個大隊と1個重砲兵大隊からなります。
初期配置されているルーマニア軍の戦力は、
A 司令部
B 中隊長
C 歩兵小隊
D 歩兵小隊
E 歩兵小隊
F 機関銃部隊
G 75mm対戦車砲 2門
H FO
I 82mm迫撃砲
J 88mm対戦車砲 2門
K 砲牽引トラック
歩兵はわずか1個中隊しかありません(涙)
この1個中隊でハンガリー軍の大群を食い止めるのはちょっと想像がつきません。
しかも歩兵部隊には対戦車用火気が手榴弾しかなく、手榴弾というのは、正確には対戦車用火気ではないので、歩兵が戦車に近接強襲を試みても、 めったに成功しないでしょう。
(ただし近接強襲は撃破できなくても移動不能にはすることはできます)
そこで頼みとなってくるのが、75mm 対戦車砲です。
「ようし!かかってこい!」
と意気があがります。
しかしアイコンでは「75mm PaK40」と同じなんですが、この75mm対戦車砲は、「75mm PaK97/38」という砲で、フランス やポーランドで鹵獲した野砲「75mm Mle M1897」をドイツ軍が対戦車砲に改造した砲です。
ルーマニア軍は野砲の方はフランスから購入していましたが、対戦車砲はドイツから購入しました。
同じ75mmは変わらないのですが、 「75mm PaK 40」と比べると、貫通力や命中率は格段に劣ります。
上が「75mm PaK40 L48」、下が「75mm PaK97/38」
AP弾での貫通力は比較にならない程ですが、 実は「PaK97/38」にはHEAT弾(成形炸薬弾)が使えます。
この砲の特徴は、 対戦車にはHEAT弾を使用したということです。
ゲームでもHEAT弾を使用した場合の貫通力は「9」で す。
(HEAT弾は射程距離に関係ありません)
ちなみに「41M Turan」の装甲値
時代遅れの戦車で、 前面装甲は60mm(装甲値は6)です。
序盤の頼みの綱ですが、 南に配置されているG0砲の命中率が悪い気がします。
北に配置されているG1は、結構、活躍してくれます。(よね?)
分かっちゃいるんですが、 対戦車砲が弾を外したときの失望感はリアルですねー
一応、 マップ上には塹壕が設置してあり、 ルーマニア軍歩兵や対戦車砲は「Dug in」 状態を取っているので、敵の集中砲火を浴びても結構、持ちこたえてくれます。
ルーマニア軍のFO(前進観測隊) が歩兵よりも前にいて、 この位置だと突っ込んできたすぐに戦車に見つかり、真っ先にやられるので、出来るだけ早く後方に下げたほうがいいでしょう。
<ルーマニア軍の増援部隊>このシナリオのルーマニア軍の増援部隊は、
ソ連軍 親衛歩兵 1個中隊
ソ連軍 T34/85 3輌
十分すぎる増援が東の道路から到着してきます。
増援は20ターン目
シナリオは35ターンなので、20ターンはほぼ真ん中ぐらいですが、ルーマニア軍にとっては、待ちわびた到着となることでしょう。
またT34/85がこれほど頼もしく感じるのもこのシナリオの面白さかもしれません。
それではルーマニア軍をプレイするうえでの戦い方を見てみましょう。
その前に、1944年9月のルーマニア軍の基本的経験値と士気値を見ておきます。
基本的経験値と士気値というのは、
各国のユニットに年月によって決められた経験値と士気値のことです。
ユニットには個別に経験値と士気値がありますが、 そのことではありません。
国ごとに、年月により異なります。
どこで見るかというと、バトルモードの購入画面のここで分かります。
これはドイツ軍の1940年6月の経験値と士気値ですが、 両方とも75ととても高い数値になっています。
ドイツ軍の場合は、初めは高いですが、次第に低くなっていきます。
逆にソ連軍の場合は初めは、超低いですが、次第に高くなっていくのが特徴です。
ここの数値が低いと、 全体的に抑圧回復に失敗したり、命中率が低かったり、抑圧が上がりやすかったりなど、どうなるかは大体想像がつきますよね。
さて、ルーマニア軍の1944年9月の数値を見てみましょう。
かなり低いですw
一方、 ハンガリー軍はというと、経験値が65、士気値が60でした。
残念ながらハンガリー軍よりも低いですね。
増援で来るソ連軍は経験値、士気値ともに65です。
実際、ルーマニア軍でプレイして感じるのは、抑圧の回復に成功するなんて、 「ない」ということです。
最初の1度くらいは成功しますが、その後はほぼ成功しないと思います。
こういうときは、まず一度、敵の視界を切ることです。
具体的に、例えば多くの敵の視界内に部隊がある場合、 無理に抑圧を下げるよりもまず、携帯煙幕弾を使い、一度、敵から視界を切ります。
そうすると比較的、 抑圧に回復に成功することがあります。
もちろん一時的に安全な場所に身を隠す方がいいのですが、 このシナリオではなかなか後退が難しいので、そこまでの余裕はないと思います。
その他、機関銃部隊は歩兵の足止めをしてもらいましょう。
残念ながら助かる見込みはありませんが。
2門の82mm迫撃砲は効率よく、敵歩兵の足止めに使います。
歩兵部隊は塹壕に張り付かせるか、後退させるかは判断のしどころですが、歩兵がやられると、敵歩兵がどこにいるか見えなくなってしまうので、 そうなると迫撃砲が使いづらくなるため、できるだけ歩兵には頑張ってもらいましょう。
ルーマニア軍はどんなことをしても序盤〜中盤にかけて苦戦を強いられます。
もうギリギリっていう感じで。
そこで鍵になるのが、88mm砲です。
このシナリオの面白さは 88mmが初期配置でトラックに牽引されたままになっていることだと思います。
通常、シナリオに登場する88mmって、 あらかじめ設置されていて陣地化がされていることがほとんどですが、 今回は牽引されたままで、しかもどこに設置するかで戦況が変わってきます。
どこに設置したらいいのか?
これが悩ましい・・
88mm砲の写真を見ると、 視界の効いた砂漠や平原に陣地を構えているという写真をよく見ますが、 市街地や道路上に設置する写真はあまり見かけませんよね。
↓のように 市街地に設置してある写真は珍しい。
しかもキルマークがすごい!
実際にマップを見てみましょう。
視界の開けた場所 にするなら、AかB
道路上に設置する場合は、CかD
A、Bは射程距離があり、視界も効いているので、 88mmには適していると言えます。
Cは前方にある75mm砲が撃ちもらした敵や75mmがやられたときのための設置です。
Dは最終ラインを守るための設置、 すぐ上には司令部があります。
お薦めは C です。
Cは一番初めにプレイしたときに配置した場所です。
皆さんはどこがベストでしたか?
上級者になると、敵の砲撃を予測し、 再びトラックで牽引させて移動させることにも気を使います。
そういう技は対人戦で役に立ちます。
とにかくルーマニア軍は 少しでもハンガリーの進撃速度を遅くさせることです。
そうすれば、20ターンには強力な援軍が到着します。
このシナリオの難易度は決して高くありません。
耐え忍ぶことができれば、勝利できるでしょう。
「パウリシュの戦い」はシナリオでは35ターンで決着がつきますが、実際は9月14日〜19日の6日間かけて行われた戦闘です。
ハンガリー軍はルーマニア軍の反撃に遭い、多くの戦車、装甲車を失いましたが、 砲撃支援の下、再び前進を開始し、ついにはルーマニアの防衛線を突破します。
ルーマニアの士官候補生たちも、 もうここまでかと覚悟したそのとき、ソ連軍の増援部隊が到着し、一機に勝負はつきました。
ルーマニア軍1800名、 ハンガリー軍2万名という圧倒的戦力差の中で、命がけで戦った兵士たちを讃える記念碑がパウリシュには立てられています。
暇があったら是非、ぶらっと行ってみてはいかがでしょうか。