#004 Grasfstroms Raid (1940.3.2)
2022.9.26
今回取り上げるのは10年くらい前に攻略編で書いたシナリオ004番です。
久しぶりに先日読み返したところ、新たな史実が分かったので書き直すことにしました。
このシナリオはスウェーデン対ソ連です。
WW2ではスウェーデンは中立国としての立場を取っており、枢軸国でも連合国でもないのですが、なぜソ連と戦ったのかというところから始めましょう。
スウェーデンは一部がフィンランドと接しているのはご存じでしょう。
そのフィンランドにソ連は突然、侵攻をしました。
これが1939年11月に始まった冬戦争です。
フィンランドはスウェーデンのグスタフ5世国王に対し、ソ連の侵略から国土を守ってくれるよう嘆願書を送りました。
しかし国王はそれを公然と拒否しました。
その理由は、スウェーデン国内がソ連寄りだったため、ソ連よりもドイツの危険性を重要視していたことです。
もしフィンランドに派兵をし、ソ連と戦った場合、フィンランドの次はスウェーデンが侵略されるかもしれません。
相手はソ連ではなく、ドイツになるかもしれない。
立場上、スウェーデンは難しい選択だったと思います。
スウェーデン国王はフィンランドからの計3回にわたる嘆願書を拒否したそうです。
反面、フィンランドは藁にもすがる思いだったのことが分かります。
スウェーデンは逆に戦争中、中立国の立場を守るのに必死でした。
中立国でしたが、ドイツには大量の鉄鉱石を輸出し、連合軍には軍事基地の使用を許可しました。
戦後、ドイツに輸出した鉄鉱石や機械に関して批難されましたが、これも当然のことです。
では何故スウェーデンは、冬戦争に派兵したのでしょうか?
これはスウェーデン政府の承認なしに軍が行動を起こしたものでした。
現代のウクライナとソ連の戦争でもありましたが、義勇兵を募ったのです。
義勇兵であれば問題はないというのは、この時代も今も同じなのでしょう。
スウェーデンでは軍隊から義勇兵を募りました。
中心となったのがスウェーデン軍参謀のアクセル・ラッペ将軍とアーチボルド・ダグラス将軍。
かれらが独断で行動に移したとき、スウェーデン政府はその情報をすぐに把握できず、後になって許可をしたそうです。
15000人が志願し、10000人が訓練を受け、その中の8000人がフィンランドに入りました。
彼らはスウェーデン義勇軍と呼ばれ、その中にはデンマーク人やノルウェー人も少数ですが含まれていました。
1940年2月、スウェーデン義勇軍部隊はフィンランドに入りました。
2月23日にフィンランドの北部戦線のサッラ(Salla)という地で、フィンランド軍と交替することになりました。
この北部戦線ではそれまでソ連軍とフィンランド軍とで激戦が繰り広げられていました。
サッラには冬戦争の開戦当初、わずか数名のフィンランド兵しかいませんでした。
そこにソ連第122ライフル師団が侵攻してきたため、急きょ部隊を編制し、サッラ大隊(第17分隊)を作り防衛します。
これがサッラの戦いです。
ソ連軍はソ連第122ライフル師団が11月30日に進撃を開始、フィンランド軍を撃退していきました。
しかし12月16日、フィンランド軍が反撃に転じます。
ソ連軍の補給が伸びきったところをフィンランド軍が攻撃、逆にフィンランド軍の反撃によりソ連軍第122ライフル師団は死傷者が続出しました。
そのためソ連軍は第88ライフル師団が増援として派遣されることになりました。
(第88ライフル師団は弾薬不足のため戦闘には参加できませんでした)
戦線は一時膠着したため、フィンランド軍もスウェーデン義勇兵の部隊と入れ替わることになりました。
2月27日、スウェーデン義勇兵の部隊が戦線に到着、フィンランド軍と交替しました。
しかしその日、ソ連軍と交戦が行われました。
(この27日の戦闘はシナリオ#657になっています)
スウェーデン義勇兵は3つの部隊(グループ)で編成され、第1グループ、第2グループ、そして予備部隊の第3グループとなっていました。
戦車や装甲車はありませんでしたが、ボフォースM/38対戦車砲、ボフォース20mm機関砲、迫撃砲、対戦車ライフルなどはありました。
3月2日の戦闘、これがシナリオ#004とシナリオ#658の戦闘です。
この2つのシナリオは同じ戦闘を題材にしたものです。
グラフストーム中尉率いる第4ジャガー中隊は、3月1日、マイナス47度という極寒の中、9時間の夜間行軍を行い、偵察任務に着きました。
森の中の小島のような四方が開けた小さな丘に弧を描くようにしてベースキャンプを設置し、ここに陣を構えました。
正午すぎ、東からソ連兵60名を発見、これを撃退するも、北と南からも敵が接近、スウェーデン部隊は包囲されそうになりました。
14時30分まで銃撃戦が続き、この時点でソ連軍は多くの損害をだしました。
午後4時、さらに150名のソ連兵が増員され、ソ連兵は400名となりました。
午後6時に照明弾を合図に、ソ連兵は一斉に襲撃、戦場では白兵戦が展開されましたが、これを全て撃退、この後、スウェーデン部隊は脱出に成功しました。
この戦いで、スウェーデン兵は3人が死亡、7人が行方不明(後に3人が帰還)、ソ連軍は200名の死傷者を出したとスウェーデンでは報告されていますが、実際はもう少し少なかったようです。
圧倒的劣勢の中で、奇跡的な戦いをしたため「グラフストームの襲撃」としてスウェーデン戦史で有名になりました。
ゲームの方を見ていきましょう。
シナリオ#658は、シナリオ#004を大きめに作られたものです。
シナリオ#004は、初期のSPWW2シナリオなので、ご存じの方も多いでしょう。
今回はシナリオ#004を見ていきます。
わずか6ターンしかありませんが、ギュっとつまった緊張感があり、個人的には大好きなシナリオです。
シナリオの背景と知ってスウェーデン側でプレイしてみると、気持ちが入り面白くなります。
スウェーデン部隊のベースキャンプをした地形は実際の戦場の地形とほぼ同じなんですね。
難易度はとても低いです。
戦線を崩さないように、うまく後退して攻撃を吸収できれば大抵勝てます。
ただし史実のように死傷者を10名以下(行方不明者7名を含む)にしようとすると、かなり慎重にならざるを得ません。
このシナリオは死傷者10名以下というしばりルールでやるのが楽しいですので、お試しください。
慣れてきたら行方不明者を省いた死傷者3名のみでやってみるといいかもしれません。
それ以外のスウェーデン義勇兵のシナリオはまたいつか紹介することにしましょう。