#638 Guryev's Headquaters 2020.12.26 更新！
今回は今まで書いてこなかったスターリングラードの戦いのシナリオの紹介です。
スターリングラードについては知らない方はいないと思いますので、いきなり本題に入りますw
まずスターリングラードの戦いを大きく前半と後半の二つに分けておきます。
前半は1942年8月23日から11月18日まで
後半は11月19日から1943年2月2日まで
スターリングラードの戦いのWikiを見ると6月28日からになっていますが、6月28日はドイツ軍のブラウ作戦が発動した日付で、スターリングラードでの戦闘まではまだ時間があります。
なので前半をドイツ軍がスターリングラードの郊外で戦闘を始めた8月23日からにしました。
またスターリングラードの市内に突入したのは9月13日です。
ドイツ軍の戦史好きやミリオタにとってスターリングラードというのはドイツ軍が市内に突入し死闘を繰り広げた9月13日から10月下旬、もしくは11月中旬までのことを言いますww
これはどういうことかと言うと、前半はドイツ軍が優勢にソ連軍を追い詰めていくからであり、逆に後半はソ連軍の反攻で始まりソ連軍が優位になるからです。
後半が始まる11月19日にソ連軍はウラヌス（ウラン）作戦を発動、この大反撃によりドイツ軍は次第にスターリングラードで包囲されていき、2月2日に降伏しています。
手元にテオドール・プリーフィアという人が書いた「スターリングラード攻防戦」（死のスターリングラード）という本がありますが、この本は11月19日からのスターリングラードの戦いが描かれています。
（作者はドイツ人ですが、ヒトラー政権樹立と共にソ連へ亡命。スターリングラードのヴォルガ河対岸に住んでいたため、その有り様をつぶさに観察し戦時中に執筆、戦後ドイツに帰り1946年に出版）
2013年に製作された「スターリングラード」というロシア映画でも、1942年11月19日という日付が入っていますが、やはり大反撃に転じるロシア側の勢いが分かります。
さてさて今回のシナリオは1942年10月27日となっています。
これはスターリングラードでのドイツ軍の最後の見せ場となる戦いです。
まずスターリングラード市内の図です。
�．肇薀�ター工場
�∪屬ぅ丱螢院璽病臻す�場
��9月17日以降のソ連軍第６２軍戦闘司令部
�ぅ僖鷙�場
�ダ屬�10月治金（製鉄）工場
�Ε薀帖璽覯蹴惺�場
�Д謄縫好薀吋奪斑篭�
��中央駅（第１停車場）
��ウニベルマグ百貨店
��赤の広場
��フェリー（発着場）
��9月14日〜16日のソ連軍第６２軍戦闘司令部
��南駅（第２停車場）
��穀物サイロ
�．肇薀�ター工場通称「ジェルジンスキー・トラクター工場」はボードゲーム「スコードリーダー」で一躍有名になりました。ここはT34が生産されていた巨大な工場です。
この工場群の北側、スターリングラード郊外に「スパルタコフカ」があり、そこでドイツ軍は激しい抵抗に遭いました。スパルタコフカはなんと10月25日まで持ちこたえました。
��中央駅はdomo戦記で昔書きました。ここも激しい攻防戦が繰り広げられましたが、ドイツ軍が9月18日、占領したためソ連軍は北と南に分断させられました。
��は映画「スターリングラード」にも描かれていましたフェリー発着場。発着場はいくつかあったそうですが、この第１停車場付近がメインで、ソ連軍の増援部隊はここに船で到着しました。
��穀物サイロの戦いも激戦でした。9月22日にドイツ軍はここを攻め落としています。
第62軍戦闘司令部は9月13日までは「ママイの丘」にありましたが、9月14日に中央駅の後方��に移動、その後��に移動しました。
「ママイの丘」（ママエフの墓地）は「ママエフ・クルガン」の方が分かりやすいですね。
ここからは市内が見下ろせたため両軍の砲兵観測所になったので特に激戦でした。
もうね、どの戦いが凄かったというのは比べることができません。
市内の戦いだけでも100万人以上死んでますから。
60万人いたスターリングラードの住民が戦いが終わったときには1万人になっていたというのは正直信じられません。
今回の戦場は�イ諒佞蠅任后�
9月13日に始まったスターリングラード市街戦は両軍消耗戦となりましたが、10月23日にはソ連軍は�▲丱螢院璽氷�場の一部と�ダ屬�10月製鉄工場を残すのみとなり、市内の9割をドイツ軍は確保しました。
そして10月27日、ドイツ軍第79歩兵師団は�ダ屬�10月製鉄工場へ突入を敢行しました。
おおまかな流れを説明しました。
ではこのシナリオを見ていきましょう。
シナリオに登場するドイツ軍部隊は第79歩兵師団です。
この師団は援軍として10月17日にスターリングラードに到着しました。
10月のスターリングラードのドイツ軍の消耗は一個師団がたったの5日間で消耗していったと言われていますが、とんでもないですね。
第79歩兵師団は、このシナリオの戦闘後の11月1日からのドイツ軍最後の大規模攻撃と呼ばれる「フーベルトゥス作戦」を行いました。
この作戦は突撃工兵による特攻戦術でしたがソ連軍の抵抗が激しく、あまりにも損害が大きすぎたために失敗に終わっています。
（3000名中1000名が死傷しました）
さて時間を再び10月27日に戻しましょう。
ドイツ軍の損害も大きかったのですが、ソ連軍はもっと甚大でした。
スターリングラード市街を防衛するソ連軍は第62軍。
その司令官は「ワシーリー・チュイコフ中将」です。
チュイコフは後にソ連邦英雄の称号を2度も受けたすごい軍人です。
スターリングラードを守り抜いただけでなく、ゼーロウの戦いでドイツ軍を破りベルリンに入り、ドイツ軍の降伏を受け入れました。
ただスターリングラードの第62軍司令官に抜擢されたときは、チュイコフは中将で、前任者のロパーチンが解任されたためその後釜として9月12日、任命されました。
士気も低く、統制も取れていなかった第62軍をチュイコフは一か月でよく立て直しました。
（スターリングラードの戦記を読んでいると、チュイコフが気の毒でつい応援したくなってきます）
ヴォルガ河から武器も弾薬も持たない増援部隊が送られ、武器は「第62軍でなんとかしろ」と言われたり、党と軍との関係を改善させたり、最後の��の司令部に移動するときは船で移動したりと、綱渡りみたいなことやっています。
9月30日から10月3日にかけて大規模な増援部隊がチュイコフの元へ送られました。
その一つが今回登場する第39親衛狙撃師団です。
この師団は定員数は少なかったのですが精鋭部隊でした。
指揮官はグリエフ（グルイエフ）少将。
（グリエフは後にソ連英雄を授与されますが、1945年4月22日、ドイツ降伏の数日前に戦死しています）
10月25日の状況は、チュイコフの大規模援軍として送られた第37親衛師団、第308狙撃師団、第193狙撃師団はほぼ壊滅状態になっており、�ダ屬�10月製鉄工場を守るグリエフの第39親衛狙撃師団も危うくなりました。
そしてドイツ軍の第79歩兵師団がついに第39親衛狙撃師団の司令部を急襲することになります。
それがこのシナリオです。
ドイツ兵は司令部を発見、そして手榴弾を投げ込みました。
チュイコフはグリエフ危機の報告を受け、大至急第62軍司令部を守っていた部隊一個中隊を向かわせました。
わずか一個中隊でしたがこのチュイコフの機転により、グリエフはなんとかこの危機を免れました。
まさしく間一髪だったそうです。
（私見ですが、チェイコフの第62軍の司令部は地下10mのところにあったと言われることから、グリエフの司令部も地下壕にあったと思われます。爆撃・砲撃などから地上に置くことは不可能）
ゲームの方を見ていきます。
このシナリオはボードゲーム「アドバンスドスコードリーダー」のDASLのシナリオからの移植です。
あちこちの建物が崩壊していたり、砲弾のクレーターができていたりで市街戦の雰囲気。
グリエフの司令部のある建物。
VHが密集していますw
10月27日のグリエフの司令部は赤い10月製鉄工場の中にあったそうなので、この建物が製鉄工場なのでしょう。
こちらはグーグルマップで見た現在の赤い10月製鉄工場。
終戦後の1946年に建て替えられ製鉄工場として稼動していましたが、2009年に破産し現在は閉鎖されているそうです。
ちなみに日本の製鉄工場をグーグルマップで見てみたんですが、やっぱりデカい！
製鉄、治金の工場って、溶鉱炉とかあるのでめちゃくちゃ大きいんですね。
なのでドイツ軍の爆撃や砲撃でも建物自体は崩壊せずに持ちこたえていたのかもしれません。
攻めるドイツ軍はわずか2個中隊で戦車、装甲車はなし。
工兵隊もなし。
全て普通の手榴弾を携帯している歩兵ですw
支援砲撃も5cm迫撃砲一門のみですww
対するソ連軍はと言うと、こちらも歩兵2個中隊のみ（汗
しかも1個中隊は増援部隊です。
ただし増援部隊は序盤早々に到着しますので、それほど問題はないかも。
支援砲撃なんてあるわけない。
ソ連軍は歩兵が全て「Guard Section」（精鋭部隊）なのがせめてもの救いです。
ソロプレイではドイツ軍推奨、対人戦も可能です。
実際にソロプレイしてみた感想ですが、それほど難易度は高くありません。
もうひとひねりあったら面白かったかも、と思いましたが、史実的にそれは難しそう。
空いた時間にプレイできるので是非やってみてください。